DXとは、システムを入れることではない。
仕事と仕事の「谷間」を消すことです。
谷間で起きる事故は5つしかありません。書き写し・漏れ・落ち・手待ち・見えない。
人を増やす前に、設備を買う前に、この5つを消す。人を倍にせず、倍を回す。道具はAI(Claude)と、声と、スマホと、数千円のセンサー。全部、自分たちで作れる時代になりました。
お伝えする順番
数字の読み(入力して確かめる)
数字はサンプルです。面談で実数を入れてください。
1技能承継 ―― 書かせない、喋らせる、撮りっぱなしで貼る
- 逆張り
- 動画マニュアルが止まるのは、撮り方のせいではありません。編集が重く、見る場面が決まっていなかったからです。マニュアルを「書かせる」のも止まります。ベテランは書けないけれど、話せます。
- 因数分解
- 技能承継は5つに割れます。①聞く ②撮る ③手順書にする ④見る場所に貼る ⑤できたかを確かめる。今止まっているのは①(何を聞けばいいか分からない)と④(どこで見るか決まっていない)です。①はAIが質問を出せば済み、④はQRを機械に貼れば済みます。
- 実例
- 試作の技能承継アプリでは、端末が質問を読み上げ、ベテランは話すだけです。「感覚ですね」「経験です」と浅い答えが返ると、「その感覚は目で分かりますか、手で分かりますか」と自動で食い下がります。撮影は30秒・3カット(引き→手元→失敗と確認)。カメラが暗い・揺れている・縦向きだと、声で直します。
- 問い
- 「Aさん(溶接)が明日いなくなったら、止まる仕事はどれですか」「新人が最初に聞いてくる質問は、毎回同じではないですか」
- 利益と回収
- 一人前まで3年 → 1年半になれば、新しく10人入れたとき、のべ180か月分の「教える時間」が浮きます。ベテランが教えに取られる時間が、そのまま生産に戻ります。
危ない技能の見つけ方:できる人が1人だけ(2点)/その人が55歳以上(1点)/事故につながる(1点)。製缶なら、クレーンの合図・重量物の反転・上向き溶接・ひずみ取り・図面の展開が上位に来やすい技能です。
2デジタルツインとは何か ―― 見に行かなくても「今」が分かること
- 逆張り
- デジタルツインは、工場をまるごと3Dで再現する大企業の話ではありません。数千万円もかかりません。
- 定義
- 現実で起きたことが、その瞬間にデータの側でも起きている状態。社長が現場に見に行かなくても、画面で「今」が分かることです。
- 因数分解
- 双子は4つあります。モノ(製番・材料がどこにあるか)/ヒト(だれが、どの製番の、何をしているか)/キカイ(動いているか、止まっているか、なぜ止まっているか)/カネ(その製番は今いくら儲かっているか)。
- 実例
- 工場の平面図に、機械の状態・人・製番の位置が出る画面を作りました。時間を進めると、9時半に切断で材料待ちの呼び出しボタンが押され、10時半に設計変更が加工と溶接に届き、11時に溶接機2の電流が0になったことが、事務所にいながら分かります。
- 問い
- 「社長が今いちばん『見に行って』確かめていることは何ですか」「遅れに気づくのは、遅れてから何日後ですか」
- 利益と回収
- 見に行く時間、遅れに気づくまでの日数、手待ちの時間。どれも今は0円に見えて、実は一番高くついています。
5つの段階
| 段階 | 状態 | 製造業でいうと |
|---|---|---|
| L0 | 紙と記憶 | どこまで進んだかは、工場を一周して聞く |
| L1 | 後から入力 | 日報を月末にExcelに打つ。分かったときには手遅れ |
| L2 | 起きた瞬間に記録 | スマホの「着手」「完了」、声で日報。書き写しが消える |
| L3 | 機械が勝手に記録 | 信号灯・電流センサーで稼働が自動で入る(IoT) |
| L4 | 先を読む | 「このままだと納期に2日足りない」「来週火曜の溶接は能力の128%」が朝に出る |
触ってみる:今どの段階か(5問)
3声をどう使うか ―― 現場の入力でいちばん速いのは声
- 逆張り
- 音声は、会議の議事録を取るだけの道具ではありません。手が塞がっている現場ほど効きます。手袋をしたままスマホに文字は打てませんが、話すことはできます。
- 因数分解
- 声の使い道は7つです。①日報・作業記録を話す ②技能承継の聞き取り ③会議・商談の文字起こし → 宿題の一覧 ④電話の要件をその場で案件にする ⑤読み上げで指示(撮影コーチ・安全確認の唱和)⑥声で探す(「S-2601の穴の位置は?」)⑦外国人スタッフとの通訳。
- 実例
- 下の小窓で、「エス2601 溶接 完了 3時間」と話すと、製番・工程・状態・時間に分かれて記録されます。ブラウザに最初から入っている音声の機能なので、費用はかかりません。
- 問い
- 「手が塞がっていて、記録をあきらめていることは何ですか」
- 利益と回収
- 日報を書く時間(1人1日10分 × 人数 × 稼働日)。それより大きいのは、記録がそもそも残るようになることです。原価の議論は、ここからしか始まりません。
触ってみる:声で日報
| 時刻 | 製番 | 工程 | 状態 | 時間 | 話した言葉 |
|---|
4基幹システムにデータを入れることに、意味はない
- 逆張り
- 「基幹に入れる」が目的になった瞬間、データは死にます。入れるのは後追いの書き写しで、入れた人は見ない、見る人は入れない。
- 因数分解
- データの値打ちは、①発生した所で1回だけ取れる × ②次の工程がそのまま使う × ③判断に効く、の掛け算です。月末に基幹へ打ち直すデータは、どれも満たしません。
- AIならこうする
- 発生点(現場のスマホ・声・写真・機械)で1回取る → 製番にぶら下げる → 会計と法定帳簿に要る分だけ、API で自動で流す。基幹は「最後の受け皿」に格下げします。
- 実例
- 一元管理「製番ワン」では、寸法を1回入れると部材表・材料の注文書・見積・工程表・作業指示書・検査成績書・納品書・請求書まで出て、売上は freee に製番付きで登録されます。書き写しは0回です。
- 問い
- 「入れているのに、誰も見ていないデータはどれですか」「同じ数字を何回書いていますか」
触ってみる:書き写しにかかっているお金
5実例:図面から全部を出す(家具製造23名での話)
私が常務として入った家具製造の会社で、3次元の自動設計の仕組みを自分で作りました。
設計
約5日 → 30分
3Dなので、正面図と側面図の食い違いは「棚がえぐれて」見え、間違えない
生産スピード
2倍
平均年齢55歳の同じ人たちで、2年後(57歳)に
営業赤字
5,000万円 → 黒字
1年で
3Dのモデル1つから、見積・工程表・材料の発注書・工程ごとの図面の配布・納期・在庫と納品場所・お客様が見る画面・社内の情報共有まで出るようにしました。
設計は5人いましたが、1人と補助者で回るようになりました。残った4人は、企画設計に移り、取引先の社長になり、元請けに移って活躍しています(1人は辞めました)。
DXは人を減らす話ではありません。人が次の仕事に上がる話です。製缶の「製番」は、家具の「3Dモデル」にあたります。
6増員・設備投資の前にやること
- 逆張り
- 能力を2倍にするなら、人も機械も2倍、が普通の考え方です。でも先に山をならすと、要る人も要る機械も減ります。
- 因数分解
- 全部の製番の工程を重ねると、班ごとに「赤い日(能力の100%超え)」が見えます。赤の前後に空きがあれば、前倒しで消えます。それでも赤が残る班が、本当に人が要る班です。機械は、稼働率を測ってから台数を決めます。
- 問い
- 「今いちばん詰まっている工程はどこですか。それは毎日ですか、特定の日ですか」
- 利益と回収
- 上の「数字の読み」で、採らずに済む人数と人件費が出ます。機械1台の判断(数百万〜数千万円)が、数千円のセンサーで変わります。
7RPA・OCRは、Claudeで自分で作る方が優れている
- 逆張り
- RPAは画面のクリックをまねるので、画面が変わると壊れます。保守はベンダー頼みで、ライセンスは毎年かかります。OCRは決まった帳票しか読めず、枠がずれると止まります。
- 因数分解
- RPAがやっているのは「読む → 判断する → 書く」の3つだけです。Claudeは、読む(PDF・FAX・写真・メール)、判断する(決まりごと+文脈)、書く(API)を1本のプログラムでやります。画面ではなくAPIを叩くので、壊れにくいです。
- 原則
- 全自動を狙いません。目視の確認を10から0.5にするのがゴールです。そのために、手書き・かすれ・訂正印など意地悪なデータを先にもらいます。
- 問い
- 「FAXとPDFの注文書は月に何枚来ますか」「毎月、同じ画面で同じ操作をしている人は誰ですか」
8IoTデバイスも自作でいい
- 逆張り
- IoTは、高いパッケージを買うものではありません。ESP32やM5Stackという小さなコンピューターは数千円で、プログラムはClaudeが書きます。
- 因数分解
- 機械に手を入れずに後付けします。信号灯の色を光センサーで読む/電線を挟むだけの電流センサー(CTクランプ)で溶接機の稼働を取る/押すと事務所に出る呼び出しボタン(あんどん)/NFCタグをかざして着手・完了。
- 守ること
- 電気工事の資格が要る作業はしません。安全回路には触りません。工場のネットワークとは分けます。
- 利益と回収
- 1台3,000〜10,000円。稼働率が見えると、買わなくていい機械が分かります。
9「全員DX」は最初はやらない ―― 内製の3層
作る人 1〜2名
Claudeに話しかけて、道具を作り、直す。経営に近い方が自分で作れると一番早い。ベンダーに頼る理由が消えます
Claudeに話しかけて、道具を作り、直す。経営に近い方が自分で作れると一番早い。ベンダーに頼る理由が消えます
直してと言える人 数名
各班のリーダー。「ここが使いにくい」を、アプリの「改善提案」ボタンで出す
各班のリーダー。「ここが使いにくい」を、アプリの「改善提案」ボタンで出す
使う人 全員
「着手」「完了」を押す。話す。QRを読む。研修は要りません
「着手」「完了」を押す。話す。QRを読む。研修は要りません
- 最初の1本は、紙かExcelの書き写しを1つ消すもの。大きく作らない(動画が止まったのと同じ道を避ける)
- AIに先に制約をつけない。「AIならこうする」を出させてから、会社に合わせて削る
- 試作は1枚のHTMLで、捨てる前提。決まったら本番を作り直す。一発で完成させようとせず、10回「違う」と言う
10費用の比べ方と、データの守り方
| パッケージ | ベンダー開発 | 自作(Claude) | |
|---|---|---|---|
| 初期 | 数十万〜数百万円 | 数百万円〜 | 数万円(人の時間) |
| 月額 | 数万円〜 | 保守 数万円〜 | 数千円(サーバー・API) |
| 直すまで | 次の版まで待つ | 見積→発注→数週間 | その日 |
| 会社に合うか | 会社が合わせる | 仕様書しだい | 使いながら合わせる |
触ってみる:5年でいくらかかるか(目安)
データの守り方
- 実データは自社のサーバー(Cloudflare)に置き、入口は会社のメールアドレスでしか入れない門(Cloudflare Access)にします
- freee などの鍵はサーバーにだけ置き、画面やスマホには置きません
- 試作は端末の中だけで動き、外へ送りません。動画も端末の中に保存します
で、今日から何をするか
- 技能の星取表を1枚作る。赤い技能の一番上を、15分だけ聞きに行く(スマホを机に置いて「メモが追いつかないので」と言うだけ)
- 紙の帳票を1枚選ぶ。いちばん書き写しが多いもの(たぶん日報)。それを製番にひも付ける
- 1台だけ、溶接機に電流センサーを付ける。稼働率を1週間測る
どれも、今日始めて今週中に形になります。