62 Patterns

AI実装、62の型。

ツールの使い方の話ではありません。製造・運送・建設・食品の現場に実際に入って、うまくいったこと・止まったことから拾い出した型です。読みながら、御社の何かが1つでも思い浮かんだら、それが着手すべき場所です。

抽象化してありますすべて、会社が特定できない形に落としてあります。社名・製品名・システム名・具体的な金額は含みません。
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Prepare

1. 始める前に整える

ここを飛ばしてツールに飛びつくと、必ず突き返されます。散らかったままのものは、機械に渡せません。

01

デジタル化の前に、アナログ業務の棚卸しをする

並べ替えれば同じ種類は隣り合います。整理してから機械に渡す。順番を逆にすると必ず戻されます。

02

散らばったままでは自動化できない。固定が先

置き場所も呼び名もバラバラなものは、機械から掴めません。まず固定する。

03

マスターと入力を分ける

定番の材料や単価はマスターに握る。現場が入れるのは「何を、何個、いつ」だけ。分けないと、増えるたびに全部が壊れます。

04

マスター不在の「便利番号」は、必ず迷子を生む

現場が場当たりで振った番号が複数あると、紐づくデータが空白になります。名寄せとキー整備が先。

05

マスターの多重管理は、どんぶり勘定を生む

同じ情報がシステムごとに別々にあると、気づかないうちに数字の基準がずれます。一箇所に集約して、全部がそこを見に行く形にする。

06

「不都合がないから放置されている業務」が、いちばんの壁

手作業なら困らないので、誰も整えていない項目があります。機械で掴もうとした瞬間、そこが全部を止めます。

07

ExcelをWordのように使うのをやめる

好きなところに書いてコピペで増やす使い方をやめる。入力したものが、そのまま集計される形にする。ここが崩れているから転記地獄が生まれます。

08

単価がいつ変わったか追えない表は、儲けが見えていない

定番をコピペして日付だけ変えていると、利益率が下がった理由が分かりません。集計しているだけで、経営に使えていない状態です。

Scope

2. 何を自動化するか決める

全部を機械に渡そうとすると破綻します。消せるものと、人に残すものを先に切り分けます。

09

今ある情報だけで完結するかを、数十件で試す

1項目でも外から足す必要があれば、そこが自動化の破れ目です。全件でなく小さく試して確かめる。

10

その入力、意味がありますかを疑う

番号を丸暗記している人がいて、本人は誇らしい。でもそこに意味はありません。属人化した記憶芸は、自動化できるという証拠です。

11

正体は「バラバラの場所にあるデータを、人が集めている」

勤怠、購買、レジ、受発注。データはもう各システムの中にあります。自動化とは、その頑張りを機械に移すことです。

12

「毎日やらなきゃいけない」は、たいてい思い込み

一度作れば、実行ボタン1つで過去分まで処理できます。毎日手を動かす必要のない仕事が、驚くほど多い。

13

人の勘が効いているところは、無理に触らない

桁の取り違えを、現場は入力しながら無意識に見ています。勘が効く工程と機械に任せる工程を切り分ける。

14

判断が要る部分は人に残し、色でヒントだけ出す

自動化の狙いは「思考の省略」ではなく「単純作業の省略」。最終判断まで奪おうとしない。

15

検品も因数分解する。全部見ずに、怪しいものだけ見る

一箇所のために全部を目視するのは非効率です。「これはノールックで通す」を決める。

16

例外にも法則がある。「合図」を探す努力は必ずやる

「たまに条件が変わる」も、条件さえ特定できれば式で書けます。ここを飛ばすと自動化は崩れます。

17

人力の勘所は、安いAPIに置き換えられることが多い

経験と勘でやっている距離や相場の把握が、1回数円の外部サービスで正確に出ることがあります。

18

自動化しても、1回は必ず誰かが入れる

「全部自動」は幻想です。元データに無い情報を足すなら、その分の手作業は残ります。まず足し算が要るかを見極める。

Sequence

3. 作る順番

一発完成を狙うほうが、遠回りです。粗いものを先に動かして、現物を見ながら寄せていきます。

19

完全自動化を狙わない。まずセミオートから

半自動で回すうちに「これはここに入れるやつだ」と型が見えてきます。最初から全自動を設計する会社ほど、いつまでも動き出せません。

20

いきなり中身を作らせない。先に入力画面だけ作らせる

「ここに入れたらこうなる」を先に見せる。形が決まってから中身を作ると、圧倒的に速い。

21

Excelを丸ごと渡さない。1枚に削ってから渡す

全部入りを読ませると、こちらも相手も迷子になります。「何を入力して、何が出てほしいか」だけに絞る。

22

転記プログラムより、1枚のアプリにする

AからBへ自動転記を作ろうとすると、途端にややこしくなります。そもそも転記が必要な状態を疑う。

23

40点でも減らせればいい

全部を一発で自動化しようとしない。転記ミスとうっかりミスが減るだけでも、十分に価値があります。

24

ハリボテで動かし、「これは違う」を言ってもらう

近い形をコピペでいいから作って動かす。往復で寄せるやり方は、10回も20回もかかりません。

25

完成形を待たず、聞いた範囲でまず作る

完璧な仕様書を待ってから着手しない。現物を見せて反応をもらいながら精度を上げるほうが早い。

26

ボタンを1個ずつ積み、慣れてから統合する

最初は工程ごとに小さいボタン。現場が理解しながらついてこられる速度で機能を積む。

27

同じ部品を3種類決めれば、大半の業務は組み上がる

「ファイルを選ぶ」「値貼り付けする」「集計を更新する」。この3つを再利用できる形にすれば、あとは並べ替えるだけです。

28

「選択肢を出せ」と先に聞く

いきなり作らせない。実装前に筋が見えるし、自分が知らなかった手段が出てきます。要件定義書だけ書かせる使い方も効きます。

29

変える前に、下流への影響を確認する

社内で表記や単位を変えると、取引先側の画面の見え方まで変わり、誤発注を生むことがあります。

30

小さく練習して、引き出しを増やす

いきなり本番の基幹システムに向かわない。馴染みのある画面で1つやってみる。この積み重ねで「これは無理」も分かります。

31

暗黙知は、ビフォーとアフターの対で移植する

職人が頭でやっている判断は、手順を聞いても出てきません。「こう来たら、こうする」の対を集めるほうが速い。

Adoption

4. 現場に定着させる

作ったものが使われないのは、道具のせいではありません。人の側の設計を先にやります。

32

いきなり十数人集めると、必ず炎上する

当事者を全員集めて「話し合いましょう」は大炎上コースです。まず2〜3人で小さくやってみる。

33

全社展開より、部活動のほうが速い

全社に落とそうとすると「やらされる側」が過半になって止まります。興味がある人だけが来る形にする。

34

部活動は、必ず業務時間内にやる

業務外にすると「意識の高い人の趣味」になり、業務改善として認められなくなります。ここは譲れません。

35

入力している本人にデモをさせ、それを機械に写す

自動化とは、現場の実作業を観察して置き換えること。いつも入れている人に主役になってもらう。

36

一緒に画面を眺める「発見の会」にする

資料を一人で解析しない。「ここにヒントがあった」を本人に気づかせると、その後の設計が一気に進みます。

37

触っていいのは「青いところ」だけにする

実行ボタンだけを目立たせ、他はロックする。どこを触っても壊せない設計にする。安全性は、触れる場所を減らして作ります。

38

エラー報告が上がる文化を、先に決めておく

いちばんの悩みは、現場から不具合が上がってこないことです。「間違っていたら、どこに言うか」を最初に決める。

39

社内に「作れる人」を1人育てるのが、最速のレバレッジ

その1人ができると、20分の作業が数分になり、それが人数分効きます。外注に丸投げより桁違いに速い。

40

AIと一緒に組めば、ブラックボックス化を防げる

外注に丸投げすると「後から誰も分からない」が起きます。本人が組めば、分からなくなったらまた聞き直せます。

41

現場の「言うまでもない不便」を拾う役を、社内に置く

わざわざ言うまでもないと思われている不便が、いちばん放置されます。それを拾う役割があると、改善が自走します。

42

手離れの順番を設計する

慣れる → 既存業務が減って手が離れる → 空いたところで次の論点。この順番を守る。

43

一人でできても、張りぼて

自分の環境で動くものは成果ではありません。人に渡せて、聞かれたら答えられて、初めて価値になります。

44

AIを会議の3人目に座らせる

その場で叩き台を出させると、議論が「どう思う?」から「どこを直す?」に変わります。

Management

5. 経営の側でやること

現場に任せておいて進む話ではありません。経営が決めないと止まる論点があります。

45

システムに事業を合わせる。逆をやると必ず止まる

現場の運用をそのままに機械化しようとすると、無限の例外処理が要って破綻します。人間側の運用を直すのが先。

46

判断の場所を、下流から上流へずらす

現場でその都度考えている判断を、もっと手前で入れておく形に移す。それだけで後工程が全部ドミノで倒れます。

47

「今のままでいい」を許した瞬間、改善は止まる

落とせるものは自動で落とす、を前提に置く。落ちなかったものだけ手入力に回す。

48

期限を切って「今年中に卒業」と旗を立てる

アナログは今日困らないので、放っておくと永遠に続きます。いつまでに卒業するかを先に置く。

49

意思決定の速さは、幹部の足並みで決まる

役員がバラバラの方向を向いていると何も進みません。制度より先に、人間関係の噛み合わせを疑う。

50

経営者が現場入力に埋もれていないかを、割合で点検する

気づけば売上のかなりの割合を、社長自身が入力している。よくあります。

51

導入判断は、削減できる人件費との綱引きで決める

ツールの善し悪しではなく、綱引きの数字で判断する。

52

DXの本丸は工数削減ではない。ミスが減ることだ

手入力のミスは1件で止まりません。1つの取り違えが、後工程でまるごと連鎖します。

53

支払いや請求の基準は、主導権を持つ側に合わせにいく

自社ルールを押し通さない。揉め事の火種になる数字の基準は、統一するほうが長期的に得です。

54

コンサルの正体は「何が嬉しいか」の言語化 × 実装

嬉しいの中身と、それを実現する仕組み。両方を同時に判明させないと進みません。片方だけでは動きません。

Never

6. やらないこと

手を出さないと決めておくことで、速度が守られます。

55

みんなで手段を調べる時間は、いらない

賢い人ほど、表計算から業務アプリからAIツールまで次々に調べ出します。でも手段探しは目的ではありません。

56

必要なのはDXではなく、パソコン教室のことがある

権限は付いている。ライセンスも買っている。使い方を知らないだけ、という現場が本当に多い。

57

何でもかんでもAIにしない

毎回考えさせる必要のないものは、普通のプログラムにする。そのほうが速くて、安くて、壊れません。

58

IDとパスワードは、AIに読ませない置き方をする

認証情報をコードに直接書かない。プログラムからは使えるが中身は読めない形にする。ここは便利さと引き換えにしない。

59

セキュリティは建前でなく、実態で見る

権限設定を整えても、別の経路で普通に見えていることがあります。実際にどこまで見えるかを先に確認する。

60

10分の1の工数を、10分の1の値段で売らない

値引きに回すと、価格の根拠が「かかった時間」のままになります。時間で売っている限り、AIは自分の首を絞める道具にしかなりません。

61

直すなら10倍。ラストワンマイルは先に握る

「この値段で作る代わり、細かい修正は別」を最初に置く。ここを言えないと、速度の利益が手直しの山に沈みます。

62

売っているのは工数ではなく、要件定義の精度

外注は必ずヒアリングという蒸留を通るので、例外運用やこの客だけ違う呼び名が落ちます。毎日やっている本人なら、隅々まで入ります。

62個、全部やる必要はありません。
1つ思い浮かんだなら、それが着手点です。

AI実装 62の型

いちばん面倒な作業を、
1つだけ教えてください。

その場で、消せるかどうかをお答えします。消せないなら、消せないと言います。