62 Patterns
ツールの使い方の話ではありません。製造・運送・建設・食品の現場に実際に入って、うまくいったこと・止まったことから拾い出した型です。読みながら、御社の何かが1つでも思い浮かんだら、それが着手すべき場所です。
Prepare
ここを飛ばしてツールに飛びつくと、必ず突き返されます。散らかったままのものは、機械に渡せません。
並べ替えれば同じ種類は隣り合います。整理してから機械に渡す。順番を逆にすると必ず戻されます。
置き場所も呼び名もバラバラなものは、機械から掴めません。まず固定する。
定番の材料や単価はマスターに握る。現場が入れるのは「何を、何個、いつ」だけ。分けないと、増えるたびに全部が壊れます。
現場が場当たりで振った番号が複数あると、紐づくデータが空白になります。名寄せとキー整備が先。
同じ情報がシステムごとに別々にあると、気づかないうちに数字の基準がずれます。一箇所に集約して、全部がそこを見に行く形にする。
手作業なら困らないので、誰も整えていない項目があります。機械で掴もうとした瞬間、そこが全部を止めます。
好きなところに書いてコピペで増やす使い方をやめる。入力したものが、そのまま集計される形にする。ここが崩れているから転記地獄が生まれます。
定番をコピペして日付だけ変えていると、利益率が下がった理由が分かりません。集計しているだけで、経営に使えていない状態です。
Scope
全部を機械に渡そうとすると破綻します。消せるものと、人に残すものを先に切り分けます。
1項目でも外から足す必要があれば、そこが自動化の破れ目です。全件でなく小さく試して確かめる。
番号を丸暗記している人がいて、本人は誇らしい。でもそこに意味はありません。属人化した記憶芸は、自動化できるという証拠です。
勤怠、購買、レジ、受発注。データはもう各システムの中にあります。自動化とは、その頑張りを機械に移すことです。
一度作れば、実行ボタン1つで過去分まで処理できます。毎日手を動かす必要のない仕事が、驚くほど多い。
桁の取り違えを、現場は入力しながら無意識に見ています。勘が効く工程と機械に任せる工程を切り分ける。
自動化の狙いは「思考の省略」ではなく「単純作業の省略」。最終判断まで奪おうとしない。
一箇所のために全部を目視するのは非効率です。「これはノールックで通す」を決める。
「たまに条件が変わる」も、条件さえ特定できれば式で書けます。ここを飛ばすと自動化は崩れます。
経験と勘でやっている距離や相場の把握が、1回数円の外部サービスで正確に出ることがあります。
「全部自動」は幻想です。元データに無い情報を足すなら、その分の手作業は残ります。まず足し算が要るかを見極める。
Sequence
一発完成を狙うほうが、遠回りです。粗いものを先に動かして、現物を見ながら寄せていきます。
半自動で回すうちに「これはここに入れるやつだ」と型が見えてきます。最初から全自動を設計する会社ほど、いつまでも動き出せません。
「ここに入れたらこうなる」を先に見せる。形が決まってから中身を作ると、圧倒的に速い。
全部入りを読ませると、こちらも相手も迷子になります。「何を入力して、何が出てほしいか」だけに絞る。
AからBへ自動転記を作ろうとすると、途端にややこしくなります。そもそも転記が必要な状態を疑う。
全部を一発で自動化しようとしない。転記ミスとうっかりミスが減るだけでも、十分に価値があります。
近い形をコピペでいいから作って動かす。往復で寄せるやり方は、10回も20回もかかりません。
完璧な仕様書を待ってから着手しない。現物を見せて反応をもらいながら精度を上げるほうが早い。
最初は工程ごとに小さいボタン。現場が理解しながらついてこられる速度で機能を積む。
「ファイルを選ぶ」「値貼り付けする」「集計を更新する」。この3つを再利用できる形にすれば、あとは並べ替えるだけです。
いきなり作らせない。実装前に筋が見えるし、自分が知らなかった手段が出てきます。要件定義書だけ書かせる使い方も効きます。
社内で表記や単位を変えると、取引先側の画面の見え方まで変わり、誤発注を生むことがあります。
いきなり本番の基幹システムに向かわない。馴染みのある画面で1つやってみる。この積み重ねで「これは無理」も分かります。
職人が頭でやっている判断は、手順を聞いても出てきません。「こう来たら、こうする」の対を集めるほうが速い。
Adoption
作ったものが使われないのは、道具のせいではありません。人の側の設計を先にやります。
当事者を全員集めて「話し合いましょう」は大炎上コースです。まず2〜3人で小さくやってみる。
全社に落とそうとすると「やらされる側」が過半になって止まります。興味がある人だけが来る形にする。
業務外にすると「意識の高い人の趣味」になり、業務改善として認められなくなります。ここは譲れません。
自動化とは、現場の実作業を観察して置き換えること。いつも入れている人に主役になってもらう。
資料を一人で解析しない。「ここにヒントがあった」を本人に気づかせると、その後の設計が一気に進みます。
実行ボタンだけを目立たせ、他はロックする。どこを触っても壊せない設計にする。安全性は、触れる場所を減らして作ります。
いちばんの悩みは、現場から不具合が上がってこないことです。「間違っていたら、どこに言うか」を最初に決める。
その1人ができると、20分の作業が数分になり、それが人数分効きます。外注に丸投げより桁違いに速い。
外注に丸投げすると「後から誰も分からない」が起きます。本人が組めば、分からなくなったらまた聞き直せます。
わざわざ言うまでもないと思われている不便が、いちばん放置されます。それを拾う役割があると、改善が自走します。
慣れる → 既存業務が減って手が離れる → 空いたところで次の論点。この順番を守る。
自分の環境で動くものは成果ではありません。人に渡せて、聞かれたら答えられて、初めて価値になります。
その場で叩き台を出させると、議論が「どう思う?」から「どこを直す?」に変わります。
Management
現場に任せておいて進む話ではありません。経営が決めないと止まる論点があります。
現場の運用をそのままに機械化しようとすると、無限の例外処理が要って破綻します。人間側の運用を直すのが先。
現場でその都度考えている判断を、もっと手前で入れておく形に移す。それだけで後工程が全部ドミノで倒れます。
落とせるものは自動で落とす、を前提に置く。落ちなかったものだけ手入力に回す。
アナログは今日困らないので、放っておくと永遠に続きます。いつまでに卒業するかを先に置く。
役員がバラバラの方向を向いていると何も進みません。制度より先に、人間関係の噛み合わせを疑う。
気づけば売上のかなりの割合を、社長自身が入力している。よくあります。
ツールの善し悪しではなく、綱引きの数字で判断する。
手入力のミスは1件で止まりません。1つの取り違えが、後工程でまるごと連鎖します。
自社ルールを押し通さない。揉め事の火種になる数字の基準は、統一するほうが長期的に得です。
嬉しいの中身と、それを実現する仕組み。両方を同時に判明させないと進みません。片方だけでは動きません。
Never
手を出さないと決めておくことで、速度が守られます。
賢い人ほど、表計算から業務アプリからAIツールまで次々に調べ出します。でも手段探しは目的ではありません。
権限は付いている。ライセンスも買っている。使い方を知らないだけ、という現場が本当に多い。
毎回考えさせる必要のないものは、普通のプログラムにする。そのほうが速くて、安くて、壊れません。
認証情報をコードに直接書かない。プログラムからは使えるが中身は読めない形にする。ここは便利さと引き換えにしない。
権限設定を整えても、別の経路で普通に見えていることがあります。実際にどこまで見えるかを先に確認する。
値引きに回すと、価格の根拠が「かかった時間」のままになります。時間で売っている限り、AIは自分の首を絞める道具にしかなりません。
「この値段で作る代わり、細かい修正は別」を最初に置く。ここを言えないと、速度の利益が手直しの山に沈みます。
外注は必ずヒアリングという蒸留を通るので、例外運用やこの客だけ違う呼び名が落ちます。毎日やっている本人なら、隅々まで入ります。
62個、全部やる必要はありません。
1つ思い浮かんだなら、それが着手点です。
AI実装 62の型